わりきり

ワリキリ
僕は、町はずれの小さな喫茶店で、ロールケーキと女の子を待っていた。
この店の名物である、抹茶風味で小豆が入っているそのローキケーキを、僕はずっと食べてみたかったのだ。
お酒が飲めない甘党の僕にとって、甘味は最大の活力源である。
ただ、残念ながら客層が女の子中心の店であり、男一人で入るのもずっと躊躇われていた。
そんな折、この女の子とわりきりで会うことになった。地域も店の近くである。
これは幸いとばかりに、この店を待ち合わせ場所にさせてもらったのだ。
わりきりにかこつけて、女の子と併せて名物ロールケーキを頂く。我ながら、よいシナリオだ。
僕は、ティーポットになみなみと入った紅茶をカップに注ぎながら女の子を待った。
女の子が来てから「お腹空いてない?」とか何とか言ってロールケーキを注文すればよかろう。
そう思いながら、紅茶を飲みながら周りの様子を窺っていると、皆、当たり前とばかりにロールケーキを注文している。
僕は、その様子に、売り切れとなる危機感を抱いた。
先に、ケーキを注文してしまおうか?と思ったが、待ち合わせにやってきた女の子が僕を見た場合、ロールケーキをパクついているおっさんてどう映るだろう?退いてしまうのではないか?そう考えると、どうしてもオーダーする手が止まってしまう。
そんなことよりも、わりきりの女の子はまだ来ない。時間から10分すぎている上に、着信もない。
僕の頭の中で、これはすっぽかしではないか、という懸念がよぎる。
いや、そうでなくても無責任な口約束だ。すっぽかしもままある。しかし、今日は別だ。ぜひ来てほしい。来てくれないと、ロールケーキが食べられないではないか。
甘み不足で乾いている僕の舌の優先順位は、今は、若いまんこより甘いロールケーキだ。
待ち合わせから30分が経過して、僕が限界点に達しようとしていたその時
「ごめんなさい、補習に引っかかちゃって」
と、ツインテールの女の子が僕を見つけて駆け込んできた。
僕には、その女の子の丸っこい顔が待ちに待ったロールケーキのように見えた。
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